酷く、酷く傷付けてほしい。誰にも同情の余地なんか無いくらい、僕が痛みで喚く事が無いくらい無茶苦茶に。心が卵の殻ように脆く割れてしまっても、それでもなお傷付けて、夜を迎えるたびに呼吸を忘れて、君の名前だけを言葉だけを叫ばせて。
優しさだけじゃ、生きてなんかいけないから。
「糸、糸、糸、い、と、」
なあに、と呼びかけたかった。掠れた声を出しながら、僕の名前を必死に呼んで助けを求めてる哀れな彼に。ただ一心に僕だけを求めている彼に返したかった。受け取るばかりで、何も出来ない僕を許してね。
「あああ、ああああ、」
ヒステリック気味におおつぶの涙を落としながら僕の左手を取ると、かみさまに祈るように、ごめん、と云った。普段の彼からは想像も付かないほど気弱で儚くてうつくしくて、僕はこの瞬間が好きだ。自分の手で壊したくせに、許しを請う哀れな愛しい彼の姿が僕の大嫌いなにんげんそのもので、とてもとてもかなしくなった。
尊い君。この世界、生きとし生けるもの全ての中で、唯一僕を壊すひと。あまやかな優しさなんていらない。僕だけをみて僕だけを壊して。優しい優しい君。握り締めた掌にどんな思いが乗せてあるかも知らないで、ただただ懺悔して許しを請い、少しずつ壊れゆく。
「い、と、」
ああ、世界はこんなにも素晴らしい!